THE・GEESE尾関が深く語るブログ

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トコブシについて語る4

 病院を出ると目の前に大きな森が広がっていた。どうやらこの病院は深い森に囲まれているらしい。「とにかくここから離れたい」由美子はなんのためらいも無く森に飛び込んで行った。
 一本の道が奥へと伸びている。ここをたどって行けば町まで出れるかもしれない。由美子は木の根元にマツタケが生えていないか確認しながら奥へと進んで行った。
 歩いて1時間経っただろか。一向に森を抜ける気配もマツタケも無かった。由美子は考えていた。「病院の窓から見えた町にあと少しで必ず出るはずだし、マツタケはアカマツやコメツガ、ツガなどの林の地上に生えるはずだ。」と。さらに「まれにクロマツ林にも生える。梅雨頃に生える季節外れのマツタケをサマツ(早松)と呼ぶ地方もある。」とも考えていた。
 由美子の予想は外れていた。どれだけ歩いても町はおろか人の気配さえなかった。マツタケは季節ではなかった。
 4月とはいえまだ風も冷たい。その風は病院から何も羽織らず出てきた由美子の体温を容赦無く奪って行った。体力も限界にきていた。ポケットを探るとマウスピースが入っていた。マウスピースを口に含むと歯の噛み合わせが少し良くなったが状況は変わらなかった。
 由美子はその場にしゃがみこむと、現実から逃避するためにキノコに話しかけるのだった。
 
  続く

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